歯科医療に係る診療報酬点数等に関する質問主意書

【しかいりょう-かか-しんりょうほうしゅうてんすうとう-かん-しつもんしゅいしょ】

最終更新日:2016-04-15 (金) 17:32:07






質問第八〇号

歯科医療に係る診療報酬点数等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年六月十四日

櫻  井   充

参議院議長 扇   千  景 殿



歯科医療に係る診療報酬点数等に関する質問主意書

 歯科医療を取り巻く環境は、過去の診療報酬改定に伴い、その都度厳しい状況にさらされてきていたと言っても過言ではない。
 特に、平成十八年度診療報酬改定においても医療全体では改定率マイナス三・一六%と示されているが、実際、歯科医療に関する部分ではマイナス一〇%程度まで達するという推計もあり、さらに悪化の一途を辿っている。今回の改定は現場を無視した非現実的なものとなっており、特に患者への各種の文書提供や明細領収書発行等により大きな混乱をもたらしている。
 本来、歯科医師と患者が向き合い、会話することは問診票には表せない病歴や家族歴などが詰まっている最も大切な情報である。しかし、今回の文書提供によりその会話を行う時間や治療時間が削減され、国民に良質な歯科医療を提供するどころか歯科医療そのものが崩壊する危機的状況にあると言わざるを得ない。
 そこで、以下質問する。

一 高齢者の「八〇二〇(八十歳になっても二十本以上自分の歯を保とうとする運動)」達成率が上昇すると、高齢者の医療費が大幅に減少するというデータや論文が、過去に何度も発表されている。このデータや論文を基に考えると、今回の歯科診療報酬改定は、歯牙、歯髄、歯質の保存に対して点数を下げ包括化するなど、実態として「八〇二〇」達成率を上げる方向での評価方法にはなっていない。なぜ、歯や歯髄、歯質を保存すればするほど経営を圧迫するような改定を行ったのか。政府の明確な見解を示されたい。

二 医療全体の改定率マイナス三・一六%を前提とした平成十八年度診療報酬改定における歯科医療に関する部分が、現場において全く不適切な低い評価になっており、現場に混乱をもたらしているので、二年に一度の定期的な診療報酬改定を待つことなく、緊急措置で改めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 患者一人当たりの治療時間が明らかに短縮されるにもかかわらず、文書提供により診療内容の説明を行うことが可能であるとする根拠は何か。例えば、一日十人程度の診療であればもっと患者の話を聞いて、説明時間を増やしながら運営していくことが可能である。しかし、一日三十人以上の患者を抱えている診療所において、しかも歯科医師一人で診療を行っている場合であっても、可能な制度であると考えているのか。

四 今回の改定で保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)も改正され、歯科医師には費用ごとに区分記載した領収証の発行が義務付けられた。しかし、民法第四百八十六条では「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。」とされ、無条件の領収証の発行義務は規定していない。領収証の発行義務を療担規則で制定できる法的根拠はどこにあるのか。

五 厚生労働省の研究班が平成十七年度に行った「医療安全に関するコスト調査」(主任研究者・今中雄一京都大学教授)では、「歯科の医療安全対策費を『患者一人一回当たり』で見ると(中略)平均値は三百五十円(中略)医科よりも重くなっている。」としている。
 一方、感染防止対策費用は「再診料」の中に含まれているというのが、厚生労働省の見解であり、今回の改定ではその再診料が三十八点(三百八十円)に下がってしまい、このわずかな点数の中には、ある病名の診療継続中に罹患した別の病名の診断料などまでも含まれるとされている。
 これによって、歯科医療の安全・感染防止対策は原価割れ(赤字化)の状態に陥っている。政府は、この点数で歯科において医療安全・感染防止対策を適切に行うことが可能であると考えているのか、根拠を示しつつ明確に答えられたい。また、このようなひどい状況を放置・容認するのか。

六 歯科疾患総合管理料においては、患者の署名が算定要件となっている。しかし、信頼関係が築かれていない初診もしくは数回程度の来院の患者の場合、署名を求めると不信がられたり、拒否されたりと、不必要な混乱を生じさせているのが実態である。このように署名を求めなければならない根拠は何か。

七 歯科疾患総合管理料においては、前医受診・算定の確認を現医に義務づける制度に改められた。しかし、この方法は患者が自由に医院を選択する(フリーアクセス)権利を侵害することにつながる。また、前医名について話したがらないことも度々あり、これを無理矢理聞き出すことは医学や治療の上での必要な問診行為を逸脱し、またプライバシーの権利という観点で人権上の問題がある。さらに当該医院が前医への問い合わせを行う時、その前医は問い合わせ元の身元が本当の医院なのかどうかを確認できないことが想定され、個人情報の不正取得の手段として悪用される可能性も十分考えられる。このように前医受診・算定の確認義務を現医に負わせる合理的な理由は全く見いだせないと考えられるが、政府の見解を示されたい。

八 歯科疾患総合継続指導料において、慢性疾患のみならず歯冠修復物脱離(他医院製作物を含む。)等突発的疾患も含める根拠は何か。また、あまりにも低い包括点数となっている計算根拠を示されたい。

九 歯科衛生士がスケーリングと診療補助としてのルートプレーニングを行うことができる根拠は、歯科衛生士法第二条第一項及び第二項であるとされている。しかし、都道府県の指導医療官ごとの解釈では歯科衛生士がスケーリングとルートプレーニングを行うことができるか否かについての見解が統一されていない。
 このことにより、歯科衛生士がスケーリング及びルートプレーニングを行うことは、ある県では合法であるが、他県では違法であるというような実態になっているが、政府はこのことを認識しているか。例えば、スケーリング及びルートプレーニングが違法行為とされている県の場合、歯科衛生士学校等において教授している内容(スケーリング等の方法)を臨床現場で実践することができない上、歯科衛生士法第二条第一項及び第二項の規定も無視することになるが、これについて政府の見解を示されたい。

十 現在の歯科衛生士が行うことのできる行為について、過去に出された歯科衛生士の業務範囲についての疑義照会に対する厚生省(当時)の回答(昭和四十一年八月十五日付歯第二三号)のように、個別列挙で示されたい。なお、答弁に当たっては、昭和四十一年当時の回答から変化はないという趣旨ではなく、昭和四十一年以降の諸事情を考慮して、現状に適合した明確なものを示されたい。

十一 歯科衛生士の役割はますます重要なものとなっているが、政府は、歯科衛生士の業務についてどのような展望を持っているのか。歯科衛生士の業務範囲を狭めようとしているのか。
 また、時代に合わなくなっている歯科衛生士法の抜本的改正も行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

十二 歯科診療報酬の低下や使用金属の高騰等により、歯科技工士を取り巻く環境の悪化に拍車がかかり、実態として彼らは長時間・低賃金労働を強いられている。また、安価で低質な海外の技工物を使用することによる国内の歯科技工技術の空洞化等も懸念されている。政府は、これらの緊急事態に対してどのような対応を予定しているのか。

十三 大学や日本歯科医師会における研究・調査によれば、日本の歯科医療は先進諸外国と同程度の水準でありながら、その診療報酬の金額は先進諸外国の約十分の一程度となっている。これでは日本の診療報酬の金額はあまりに安いのではないか。
 また、各国で事情が異なることは理解できるが、政府は日本の歯科医療をどの程度のレベルにすることを求めているのか。歯科診療報酬や患者一人にかかる治療時間を含めて、見解を示されたい。

  右質問する。



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